もう一つの疑問である、「キネシオテーピング法を使うと目的の筋肉を最良の状態に回復させるので、機能が回復し症状も軽減させることができるが、同じように治療してもあまり効かない、もしくは効きにくいことがあるのはなぜか」についても、前回の「なぜ体(背骨や骨盤)はゆがむのか、なぜ背骨や骨盤の関節の動きが悪くなるのか」の答えと同じことに気が付きました。
通常キネシオテーピング法を筋肉に対して行うと目標の筋肉はすぐに回復します。しかし、その筋肉を弱めたり異常な状態にしているものの原因が別であれば、その原因を取り除かなければキネシオテーピングが効きにくいことがあります。筋肉が本来の機能を発揮できない状態は筋肉そのものにある場合もありますが、原因は別で結果としてその筋肉を弱めてしまっている場合もあります。
その原因とは何か?原因を突き詰めていくと、内臓の圧力上昇や機能低下などにたどり着きます。内臓の圧力上昇により連結している筋膜や筋肉に影響を与え、さらにそれらの筋膜や筋肉に連動して症状の出ている筋肉に影響を出している場合があります。また、直接の連動ではなく臓器の機能低下などによる神経の反射により特定の筋肉の機能を弱めている場合もあることが分かってきました。
(※その他、①の疑問で取り上げた「体(背骨)のゆがみ」により脊髄神経の機能低下から支配領域の筋肉に影響して筋機能が低下している場合もあります。その場合、背骨のゆがみを治療すると一時的に筋肉の機能は回復しますが、背骨のゆがみを作る原因そのものを治療しないと何度治療してもまた戻っていきます。)
それらはまさに「自律神経」の作用であり、その状態(筋肉が弱くなったり十分機能を発揮できない状態)で重力がかかった場合、重力に対し本来の姿勢や機能を維持することが難しくなってきます。その状態で生活を続けることにより余計な負担が筋肉や関節にかかり、筋肉の機能をより低下させ、結果痛みや障害、変形などを発生させるのです。つまり、こちらも原因は「自律神経」と「重力」なのです。
以上、長年の2つの疑問に対する答えを簡潔に述べさせてもらいましたが、実際「自律神経」の体に対する影響はもっと複雑で、精神状態などによっても筋肉の緊張の変化が起きたり、背骨の硬さや柔らかさは変化します。
この「自律神経」と「重力」のそれぞれの影響が交差する場所に症状は現れます。これらの事に気付いてからは、原因不明の方や病院でなかなか治らなかった方でも治ることが多くなってきました。原因が分からない・何年も治らない・治ってもまた繰り返す方のほとんどは私から見ると大体原因があります。それらは「キネシオ的な見立て」によるものがほとんどです。
「キネシオ療法」の優れている所は、これらの「自律神経」と「重力」の両方を考慮して治療を行っていく点です。この2つを同時に解決させるのは、私の知る限り「キネシオ療法」しかないと思います。いろいろな治療法が世の中にはありますが、何か1つの目的に特化しているものがほとんどです。
「キネシオ療法」をさらに突き詰めていくと最終的には「五臓の色体表」(「黄帝内径素問」という東洋医学で最古と言われる医学書の中の体の変化・影響をまとめたもの)にまでたどり着いてしまいます(ただし東洋医学では「重力」という概念がありません)。
「キネシオテーピング療法」だけを学んでいた時には、「キネシオ療法」自体がそれだけ深いもので応用範囲も広いものだとは考えてもいませんでした。キネシオ療法、特に「キネシオテーピング療法」と「筋・筋膜スラッキング療法」は特に奥が深いので、未だに勉強を続けています。
~12回連載・⑪に続く~